こんにちは、水野です。MA/CRM業界のマネージャーとして本業でAIビジネスを設計し、副業でスタートアップの営業戦略を支援しています。そしてミュージシャン活動もしています。
今回は、株式会社ギックス共同創業者で戦略コンサルタントの田中耕比古さんの『仕事を面白くするギミック50』(明日香出版社)を2026年8月に読了しました。シリーズ10万部を超えた『一番伝わる説明の順番』の著者が、今度は「仕事は、ゲームだ」という切り口で、仕事に仕込む50個の”しかけ(ギミック)”をまとめた一冊です。
結論から言うと、書かれている中身は信頼・段取り・仮説思考・チームワークといった王道の仕事術です。ただしそれが全編RPG(ロールプレイングゲーム)のメタファーで語られることで、驚くほど読みやすく、記憶に残る形に変換されています。「月曜の朝が重い」と感じている若手〜中堅ビジネスパーソンに、個人的にはかなりおすすめできる本でした。
この本は誰向け?──「仕事=生真面目で無機質なもの」と感じている人へ
本書の前提はシンプルで、人生も仕事もRPGとして捉えてしまおうというものです。実力は「レベル」、日々の苦労は「経験値」、タスクは「ミッション」、体調は「ステータス」、そして転職や起業は「新たな大地への扉」。著者自身、SE→アクセンチュア戦略グループ→日本IBM→ギックス共同創業・上場という冒険譚の持ち主で、その実体験がゲームの世界観に乗せて語られます。
ギミックとは「しかけ」「からくり」のこと。ゲームの世界では「プレイヤーが楽しめる少し特殊な仕掛け」を指します。これを現実の仕事に組み込むことで、「与えられた作業」を「クリエイティブに取り組むゲーム」に書き換えよう、というのが本書の狙いです。
対象読者は明確で、仕事を「生真面目で無機質なもの」と感じている若手〜中堅層。逆に、既に自分なりの仕事哲学が固まっているベテランには、既知の内容が多いかもしれません(それでも後輩への”翻訳ツール”として使えます。これは後述します)。
ハイライト3つ
1. 「しんらい」パラメータと信頼残高──一度失うと元のルートには戻れない
50個の中で個人的にいちばん本質的だと思ったのが、「しんらい」パラメータを上げるという章です。仕事でいちばん大切な能力値は論理的思考力でも体力でもなく「しんらい(信頼)」であり、しかも自分では直接操作できない、相手が決める特殊パラメータだと整理されています。
面白いのがゲーム的な喩えで、「正義」と「悪」のどちらに傾くかでストーリーが変わるゲームでは、一度「闇」に傾くともう「光」のルートには戻れない。信頼もまったく同じで、積み上げるのは大変、失うのは一瞬。だからこそ、遅刻しない・期限を守る・嘘をつかないという当たり前の行動を愚直に続けて「信頼残高」に記帳し続けるしかない、と説きます。
できない依頼を安請け合いせず「それは難しい」と理由を添えて早めに伝えることも信頼残高を守る行動だ、という指摘は、マネージャーとしてメンバーに伝えたい言葉そのものでした。
2. 「ターン・スキップ」と「トラップ魔法」──コミュニケーションの往復回数を減らす技術
実践面でいちばん今日から使えるのが、第2章の「ターン・スキップ」です。仕事のターン数=コミュニケーションの往復回数と定義し、メールに「AならばX、BならばY」という条件分岐をあらかじめ仕込むことで、相手とのラリーを一往復で終わらせる技術が紹介されます。
これと対になるのが、仮説思考を「トラップ魔法」に見立てた章。オープンクエスチョンは相手に考えることを丸投げする行為であり、仮説に基づくクローズドクエスチョンは「相手が考えるべきことをこちらで負担してあげる」呪文だという整理は、コンサル本によくある仮説思考の説明の中でも群を抜いてわかりやすいと感じました。
「重要度が高い仕事は、緊急度が上がる前に叩く」という優先度マトリックスの章も含め、この第2章だけで書籍代の元は取れる密度です。
3. 「パーティー作り」と「みがわり」──マネージャー視点で刺さるチーム運営の章
私がマネージャーとして特に刺さったのは、第3章「人を巻き込む」でした。メンバーの得意技を見極めて最適なパーティーを編成する、報告ではなく「相談」で相手を同じ側の椅子に座らせる、そして上司・先輩に集中しがちな仕事を部下が肩代わりする「みがわり」──。
とくに「みがわり」の章は秀逸で、仕事がデキる人ほど「やらなくてもいい仕事」まで集まってしまい、本来やるべき仕事の時間が削られる。そこを後輩が地味な裏方仕事から率先して奪うと、組織全体の戦闘力が上がり、本人の「しんらい」パラメータも爆上がりする。ただし「仕事は奪っても、手柄は奪わない」。この一文はチーム運営の格言として手帳に書いておきたいレベルです。
気になった点・注意点は?
- 一つひとつのギミックは2〜4ページと短く、個々のテーマの掘り下げは専門書に譲る構成です。仮説思考や説明術を深掘りしたい人は、著者の『一番伝わる説明の順番』などを併読するのが良さそうです。
- RPGのメタファー(レベル、MP、ラスボス、エリクサーなど)が全編に貫かれているので、ゲームに馴染みがない人には比喩がピンとこない可能性があります。逆にドラクエ・FF世代には最高に読みやすいです。
- 内容自体は王道の仕事術なので、経験豊富な人には新規性より「若手に伝えるための言い換え辞典」としての価値が大きいと感じました。
こんな人におすすめ
- 仕事が「与えられた作業」に感じられて、月曜の朝がつらい若手・中堅ビジネスパーソン
- 報連相・段取り・優先順位づけなどの基本を、説教くさくない形で学び直したい人
- 部下や後輩に仕事の基本を伝えたいが、硬い言葉では響かないと感じているマネージャー
- ドラクエ・FFで育った世代で、ゲームの語彙なら仕事論がすっと入る人
- 『一番伝わる説明の順番』など田中耕比古さんの既刊が好きだった人
一緒に読みたい関連書
- 『一番伝わる説明の順番』(田中耕比古/フォレスト出版) ── シリーズ10万部超の著者代表作。本書の「完全詠唱呪文」の章が面白かった人は、説明術を体系的に学べるこちらへ。
- 『仕事の「質」と「スピード」が上がる仕事の順番』(田中耕比古/フォレスト出版) ── 段取り・優先順位のギミックを、より実務寄りに深掘りしたい人向けの一冊。
購入はこちら
まとめ
『仕事を面白くするギミック50』は、王道の仕事術をRPGの言葉に”翻訳”することで、仕事そのものの見え方を書き換えてくれる一冊でした。
- 仕事の実力は「レベル」、苦労は「経験値」、信頼は一度失うと戻れない特殊パラメータ
- ターン・スキップ/トラップ魔法/優先度マトリックスなど、明日から使える実践知が豊富
- パーティー作り・みがわりなどチーム運営の章は、マネージャーが読んでも刺さる
難しいことは書かれていません。でも、読み終えたあとに目の前のタスク一覧が「ミッションリスト」に見えてきたら、それだけでこの本の勝ちだと思います。仕事にちょっとした”しかけ”を入れて、冒険の旅を楽しみましょう。
あわせて読みたい
- 【書評】『マッキンゼー流』マッキンゼー・アカデミー/坂本貴則──A2Eを本にした「早く・うまく・楽しく」の12講座
- 【書評】佐藤傑『AIエージェント仕事術』AIに99%任せて1%に集中するための”設計”の本
またBlog以外にもYoutube、TikTokやXでも情報発信をしていますので、よかったら覗いていただき、フォローいただけると励みになります♪



コメント