【書評】『マッキンゼー流』マッキンゼー・アカデミー/坂本貴則──A2Eを本にした「早く・うまく・楽しく」の12講座

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マンタです。DXや業務設計の仕事をしながら、組織が「戦略は分かるのに動けない」ときに何が欠けているのかを考えることがよくあります。

今回手に取ったのは、マッキンゼー・アカデミーと坂本貴則さんによる『マッキンゼー流 なぜ同じ努力で成果が変わるのか 「早く・うまく・楽しく」圧倒的な結果を出す12の仕事術』(日経BP、2026年4月26日発売)です。これは同社が世界で展開してきた能力開発プログラム A2E(Ability to Execute) を、初めて一般向けの1冊にまとめたもので、コンサルタント養成の現場で扱ってきた仕事の型を、経営から現場まで同じ言語で学べる形に再編した点が大きな売りになっています。

率直な印象としては、タイトルに「マッキンゼー流」とあるのでフレーム全集を期待しがちですが、中身は 「個人の手際」だけで終わらせず、対話・会議・ストーリーまで含めて“実行を加速させるコミュニケーション”まで射程を伸ばしているのが特徴でした。強烈な新語ではなく、研修で磨かれてきた作法のエッセンスが、12のセッションとして並んでいるイメージに近いです。

この本は誰向け?

一言でいうと、「勉強熱心でツールも知っているのに、チームや組織の成果に変換できていない」感覚を持っている人向けです。マネージャー、プロジェクトオーナー、人事・人材開発、事業責任者のほか、学生や若手でも 仕事の“型”を早い段階から身につけたい人にも読みやすい構成です。

経営層向けのメッセージとしては、現場が動かない理由が「意思」だけの問題ではなく、優先順位の付け方・問題の切り分け・対話の質といった実行スキルのギャップとして積み上がっている、という見取り図が共有しやすいタイプの本です。

本書の芯:A2Eが埋めたい溝

A2Eが狙っているのは、「知っている」と「できている」の間にある実行の溝です。戦略やスライドの理解だけでは足りず、日々の優先順位、問題設定、人を巻き込む対話、会議の進行まで含めて整えると、同じ稼働でも成果の出方が変わる、という立脚点です。

また紹介されているゴール像は、スーパーマン型の個人起業ではなく、学んだ人が社内講師としてプログラムを横展開するTrain the Trainer(TtT)を想定している点が興味深いです。変革が特定の「できる人」に依存すると途端に燻り始めるので、仕組みとして再現性を持たせる方向性は、企業内教育や全社スキルアップの文脈と相性が良いはずです。

ハイライト3つ

1. 12セッションが「思考」から「場の運び」まで一列に並ぶ

目次レベルでも分かる通り、前半はプレモータム(転ばぬ先の杖)優先順位付け問題解決など、いわゆるコンサル型の基本動作に重心があります。ここで手を抜くと、後半の対話や会議改革が全部ぼやけるので、前半を習慣化する設計になっているのが読みどころです。

後半にかけては 「自分ごと」で考える創造的なチーム作りコーチング人と組織を動かす「勇気ある会話」といったテーマが続き、最後の方で 「要は何?」と物語で語るSTARモーメントファシリテーションへと接続されます。この並びは、論点を揃える力と、感情と物語を扱う力を分けないという現代的な仕事観がにじんでいます。

2. 「楽しく」を置き損ねない実行論

サブタイトルにある 「早く・うまく・楽しく」は、単なるスローガンではなく、継続と参与をどう設計するかに踏み込む入口だと受け取れます。成果主義の現場ほど「辛抱が美徳」に偏りやすいので、成果と持続可能性の両方を前提に置く姿勢は、メンタル面の摩耗が大きいチームほど効いてくるはずです。

3. 変革の主語を「組織」に広げるTtT視点

第3章で Train the Trainer が独立して置かれているのは、読者にとって実務的なメッセージが強いと思います。外部研修を受けっぱなしにせず、内製化と横展開の設計図まで視野に入れると、スキルが「イベント」で終わりにくくなります。私自身、クライアント先でツールやプロセスを入れても、運用設計と言語化が弱いと半年で元に戻る事例を何度も見てきたので、この章は特に現場感がありました。

気になった点・読み方のコツ

  • 演習と対話前提のプログラム起源なので、1人で黙読するだけより、チームで章を分担し議題を決めて読むと再現性が上がります。
  • ブランド期待値の調整:マッキンゼー関連書には珍しくない話題(優先順位、問題解決、会議効率)も含まれるため、「初見のフレーム漁り」ではなく 自組織のボトルネックに照らして読むのがおすすめです。

こんな人におすすめ

  • 事業計画や戦略は語れるが、現場の実行と会議が噛み合わないと感じているマネージャー
  • 人事・L&Dの担当者で、全社スキルと内製研修を同時に設計したい人
  • 若手からコンサル型の仕事の基本動作を身につけたいビジネスパーソン
  • AIやツールで個人効率は上がったが、チームとしての合意形成がボトルネックになっている人

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まとめ

A2Eを軸に、優先順位・問題解決からコーチング、対話と物語、会議のファシリテーションまでを一本の12講座として並べ直した実務書です。個人のテクニックに留まらず、Train the Trainerで組織に播く設計まで含めているのが、いまの「学んで終わり」になりやすい学習投資とは線を引ける点だと感じました。実行力のギャップを、言語と作法の両面から埋めたいチームに向いている1冊です。


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